ラスト




「おっはよ、奈々子v今日も可愛いよ。」
「あ、パイヴァ君。おっはよ。」
「パイヴァー!おはよー!」
「おはよ、愛美v」


「……??!!」

振り向いた先には、軽い挨拶繰り返す金髪の外人がいた。
拍子ぬけしながら僕は見る相手を間違ったのだと思いもう一度長門さんの指している指を見た。

が…。

長門さんは、まぎれもなく彼を指していた。

「あ…あの、長門さん…彼で…間違いないんですか?」
「間違えていない。彼。」
「え…えぇっ…?あの、本当にあの人が…。」

朝比奈さんも戸惑いを隠せないようだ。
僕もまだ信じられない。

あの軽薄そうな男が、キョン君の…命のカギだなんて…。

その近づいてきた男は、私服を着ている僕たちに、
正確には朝比奈さんに気づいて近寄ってきた。


「うっわ、君かわいいな。
 ここの生徒?違うよねえ。君みたいなかわいい子学校で見たら忘れられないし。
 ね、名前なんていうの?その服もすっごい可愛いよ!」

「あ、あのあの…。」

予想通りというかなんというか…朝比奈さんを口説いてきたか。
だがちょうどいい。

僕は長門さんに最後の確認の意味を込めて、視線を向けた。
長門さんはかすかにうなずく。


「……。」
内心のため息を押し殺し。

だが。


彼を取り戻すために、僕はそこにいる男に声をかけた。


「…すみません、ちょっとよろしいですか?」
「はいはい?って…男はいいよ。
 あ、もしかしてこの子の彼氏とか?」

男はさらに予想通りの答えを返す。
僕はこの先の言葉を言っていいのか一瞬不安になった。

「いえ、違います。
 ですが。」

だが、長門さんは頷いた。


「僕も彼女も、そしてここにいる彼女もあなたに用事があってきました。
 時間をいただけますか?」


丁寧にしたつもりだが、意訳すると「顔を貸せ」に近かっただろう。
それだけ声が低くなった。

その自覚はあった。



彼は少し驚いた眼をして、次の瞬間不敵な笑みを見せた。
それは先ほどまでの軽い笑顔とはあまりにも印象が違う。



「OK…ここじゃなんだし…そうだな。」

彼は少し考えると携帯を取り出し、電話を始めた。


「あ、センセー?
 うん、俺。

 ちょっと部屋貸してよ。客が来たから。
 ああ、分かってるって。サンキュ。」


「……。」

「よし、ちょっと移動するぜ。いいな?」

「…はい…。」

どうやらなかなかの難物のようだ。
一瞬僕は、涼宮さんを思い出していた。


そして、少し期待をし始めていた。




#########

彼が案内したのは、桜花学園のどうやら社会科準備室。
きれいに整頓され、掃除も行き届いているのは先ほど彼が電話していた「先生」によるものだろうか。
そんなどうでもいいことに一瞬気を取られていると。

「座りな。話があるんだろ?」


彼はいつのまにかパイプ椅子を4つならべて進めてくれていた。
そう軽薄な人物でもなさそうだ。


「あ、そっちの彼女は俺の隣りねv」
「え、ええ?!」

…でもないか。

とりあえず朝比奈さんには彼の隣りに座ってもらおう。
ごねられては面倒だし、そんな時間もない。

「分かりました。朝比奈さんはそちらに、長門さんはそちらに座ってください。」
「あ、あの古泉くん…。」
「時間はありませんから。」

中途半端に困ってる暇はないんですよ、朝比奈さん。

僕はいつものように笑って無言で語りかけた。
彼女がどう受け取ったかは知らないが。


「…さて、そっちの可愛らしい彼女が着てるのって北高の制服だよね。
 みんなN市の北高生か?わざわざ初対面の俺になんの用事かな?」

一瞬、何から切り出そうかと悩んだ。
だが…。

起った事を、最初から話すことにした。
彼が関係者なら、理解はしてくれるはずだ。



「昨日、僕たちの友人が一人消えました。」

僕の一言めに、彼は表情を変えなかった。


「…消えた?死んだ、じゃなくてか?」

「はい。その友人の名前を僕たちは思い出せなくなりました。
 友人の家には最初から彼がいた形跡がなくなっていました。

 そして、今は僕たち以外、彼を誰も覚えていません。」


「…そりゃあ素っ頓狂な話だな。
 ……で?」


「そのあとであなたが彼の魂の行方を知っていることが分かりました。」

「…へえ、俺はただの留学生だけどな?勘違いじゃないのか?」

「勘違いじゃありません。」

「なぜ言い切れる?」

「…それは…。」

「それに、なぜそんなことがお前らに分かったんだ?
 「魂」の行方なんて…普通じゃ分からない。」

「……。」

僕は、説明できなくなっていた。
説明するには長門さんの素性を言わなくてはいけない。
でも、それは…。



「……まあいいけどな。
 お前らが何者かなんて、俺には興味はない。」

「……。」




「重要なのは、お前らが取り戻しにきたことだ。」



「……え?」
「!」
「…あ、あの…。」


僕は、驚いて彼の顔を見た。
彼は、嬉しそうに笑った。


「初めてだよ、『消えた子』を追っかけてきてくれたのは。」


僕たちは、正解にたどりついたことを知った。


                              To be Continued…



はいすみません、オリキャラ登場してしまいました。
女好き留学生パイヴァ・ニール。
まあ細かい設定は特に説明しませんが;;
とりあえず古泉くんよりちょっと高めの身長と、そこそこの美形というくらいで。

とはいいつつも、まだ話は続きます。
キョン君は本当に戻ってくるかなー?


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